目次
EC市場の拡大や配送需要の増加に伴い、物流拠点(倉庫・仕分けセンター)は一年を通じて稼働し続けています。特に夏場は、屋根からの直射日光・広い建屋内部の熱だまり・人や機械の発熱が重なり、作業環境は過酷です。冷却設備を導入して環境を改善することは必須ですが、同時にエネルギーコストの高騰も課題となっています。そこで重要なのが 省エネと快適性を両立した冷却設備 です。本記事では、物流拠点に適した冷却設備の種類と選び方、省エネの工夫について詳しく解説します。
物流拠点は一般的なオフィスや工場と異なり、以下のような特性があります。
建屋が広大
天井が高く空間が広いため、冷房が効きにくい。
開口部が多い
荷物の搬入・搬出口が常時開放され、外気が入りやすい。
人と機械が密集
フォークリフトや仕分け機器が発熱し、作業員も多く、内部温度が上がりやすい。
長時間稼働
24時間稼働する拠点も多く、冷却コストが膨らみやすい。
特徴:直径数メートルの大きな羽根で空気をゆっくり循環させ、体感温度を下げる。
メリット:消費電力が少なく、省エネ性が高い。冷暖房との併用で効率が大幅に向上。
適用シーン:倉庫全体の空気循環、天井の高い施設。
特徴:冷気を局所的に吹き出すタイプ。作業員の足元や特定エリアを重点的に冷やす。
メリット:初期コストが低く、移動も容易。
デメリット:広い空間全体を冷やすのには不向き。
特徴:水の気化熱を利用し、涼しい風を送り出す。
メリット:電力消費が小さく、エアコンのように冷媒ガスを使わないため環境負荷が低い。
デメリット:湿度が上がるため、保管品によっては注意が必要。
特徴:最新機種はインバーター制御で消費電力を抑えつつ冷却力を確保。
メリット:エリアごとのゾーン管理で、必要な場所だけを効率的に冷やせる。
適用シーン:事務所スペースやピッキング作業エリア。
特徴:外気を取り入れる際にミストで冷却してから導入する。
メリット:外気温を下げてから建屋に取り込むことで、空調負荷を軽減。
ゾーニング(エリア区分冷却)
倉庫全体を冷やすのではなく、作業員が多いピッキングゾーンや仕分けラインのみを重点的に冷却。
夜間換気と冷気蓄熱
夜間の外気を取り入れて建屋を冷やし、昼間の温度上昇を緩和。
遮熱塗料・断熱材の活用
屋根や外壁に遮熱塗料を塗ることで、庫内温度の上昇を抑える。
IoTによる温度管理
センサーでエリアごとの温湿度を可視化し、必要な場所だけ効率的に冷却。
ケース1:大手物流センター
HVLSファンを導入した結果、空調使用量を20%削減。作業員の休憩回数も減り、生産性が向上。
ケース2:地域中規模倉庫
気化式冷風機とスポットクーラーを組み合わせ、局所的に冷却。初期投資を抑えつつ熱中症発症ゼロを実現。
ケース3:食品物流拠点
高効率パッケージエアコンと遮熱塗料を併用し、庫内温度を常に28℃以下に維持。冷蔵品の品質管理にも寄与。
物流拠点の冷却設備導入はコストが大きいため、国や自治体の補助制度を活用することが推奨されます。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金:高効率空調や遮熱改修が対象。
熱中症対策関連補助金:作業環境改善設備への支援。
中小企業向け助成制度:自治体ごとに独自の制度あり。
物流拠点を冷やすには、単に「大きなエアコンを設置する」だけでは不十分です。
大型シーリングファンやスポットクーラーで効率的に冷やす
気化式冷風機で省エネかつ環境にやさしい冷却
遮熱・断熱やIoT管理でさらなる最適化
補助金制度を活用して導入コストを軽減
これらを組み合わせれば、作業員の安全を守りつつ、コストを抑えた持続可能な物流運営が可能になります。
夏を乗り切るための「省エネ冷却設備」は、物流業界における必須の投資と言えるでしょう。