マイナゴ
職場温度マイナス5℃プロジェクト
2025年 9月 22日

物流拠点での教育・安全マニュアルの作り方

はじめに

物流拠点は、夏場の猛暑や冬場の低温、さらには大型機械やフォークリフトが行き交う環境など、常に安全リスクが潜む場所です。特に夏の暑さ対策に関しては、現場ごとにルールを設け、全員が徹底できる仕組みを作らなければ効果が発揮されません。そのために欠かせないのが 教育と安全マニュアルの整備。この記事では、物流拠点における教育・マニュアル作成のポイントと実践例を解説します。


なぜ物流拠点にマニュアルが必要か

  1. 多様な作業員が働く現場
     正社員・派遣社員・アルバイトなど、雇用形態が混在するため、共通のルールが必須。

  2. 交代制勤務による情報の断絶
     日勤と夜勤で作業員が入れ替わるため、統一された基準がなければ安全が守られない。

  3. 熱中症リスクの高さ
     大きな建屋は冷房が効きにくく、搬入口の開放で外気が流入しやすい。


教育・安全マニュアルに盛り込むべき内容

1. 熱中症予防ルール

  • 水分補給:20分に1回、200mlを目安に摂取。

  • 休憩基準:WBGT(暑さ指数)が28℃を超えた場合は作業を制限。

  • 服装:冷却ベストや通気性の良いユニフォームを推奨。

2. 体調チェック方法

  • 作業開始前に簡単な問診(睡眠不足、前日の飲酒、体調不良の有無)。

  • 異常があれば無理に作業をさせず、交代や休養を取らせる。

3. 作業エリアごとの注意点

  • フォークリフト走行エリアは立ち入り禁止ラインを徹底。

  • 荷捌き場は積荷落下リスクを記載。

  • 倉庫内と屋外エリアでの暑さ対策ルールを分けて明記。

4. 緊急時対応フロー

  • 熱中症の疑いがある場合の応急処置方法。

  • 救急搬送が必要かどうかの判断基準。

  • 連絡体制(誰に報告するか、緊急連絡先一覧)。

5. 教育・研修の仕組み

  • 新人研修でマニュアル内容を必ず説明。

  • 定期的にeラーニングや小テストを行い、知識を定着。


マニュアル作成の流れ

  1. 現場調査
     温度環境や作業内容を確認し、リスクを洗い出す。

  2. ルールの明文化
     「〜すべき」「〜は禁止」といった具体的な表現で記載。

  3. 視覚化
     図やイラストを多用し、外国人スタッフや新人でも理解できる形にする。

  4. 共有方法の工夫
     冊子だけでなく、休憩室へのポスター掲示やスマホ閲覧可能なデジタル版も用意。

  5. 定期的な見直し
     毎年の夏前にマニュアルを更新。現場の声を反映させる。


教育の実践方法

  • 朝礼での共有
     その日の気温や注意点を伝える「一言安全教育」を実施。

  • 動画教材の活用
     スマホやタブレットで見られる短編動画を用意し、いつでも学習可能に。

  • シミュレーショントレーニング
     熱中症を疑似体験するVR教材を導入した企業もあり、理解度が高まる。


導入事例

  • 大手宅配企業
     WBGTに応じた休憩ルールをマニュアル化。導入後は熱中症による搬送件数が半減。

  • 食品物流センター
     新人研修にeラーニングを導入し、外国籍スタッフも共通理解が可能に。

  • 中小物流会社
     休憩室に「熱中症危険度ポスター」を掲示。シンプルなルールでも効果を発揮。


補助制度の活用

  • 厚生労働省:職場環境改善助成金
     安全教育やマニュアル作成費用の一部が助成対象になる場合あり。

  • 自治体支援
     東京都・大阪府などで「熱中症対策教育プログラム」への助成を実施。


まとめ

物流拠点における暑さ対策は、単なる設備導入だけでなく 教育とマニュアル運用 が重要です。

  • 熱中症予防・休憩ルールを明文化

  • 作業エリアごとのリスクを具体的に記載

  • 緊急対応フローをわかりやすく提示

  • 新人研修や定期教育で浸透させる

これらを実践することで、誰もが安心して働ける職場をつくることができます。教育とマニュアルは「紙のルール」ではなく、 命を守る現場の約束事 なのです。