マイナゴ
職場温度マイナス5℃プロジェクト
2025年 9月 22日

屋外作業現場のWBGT計測と安全マニュアル活用法

はじめに

夏の屋外作業現場は、直射日光や地面からの照り返しによって体感温度が40℃を超えることもあり、熱中症リスクが極めて高い環境です。労働災害防止の観点からも、 客観的な指標をもとに安全管理を行うこと が必須となっています。その中心的な役割を果たすのが WBGT(湿球黒球温度)。単なる気温ではなく湿度・放射熱を加味した「暑さ指数」であり、労働安全衛生分野で標準的に活用されています。この記事では、WBGT計測の重要性と、実際に現場で活用する安全マニュアルについて詳しく解説します。


WBGTとは?

WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)は、次の3つの要素を組み合わせて算出される暑さの総合指標です。

  1. 湿球温度(湿度を反映)

  2. 黒球温度(輻射熱=太陽光や地面からの熱を反映)

  3. 乾球温度(通常の気温)

これらを組み合わせることで、人が体感する「暑さ」を正確に表現できます。


WBGT基準と作業管理

  • 25℃未満:ほぼ安全。通常作業可。

  • 25〜28℃:警戒。水分補給と適度な休憩が必要。

  • 28〜31℃:厳重警戒。激しい運動や作業は制限。

  • 31℃以上:危険。原則として作業を中止。

厚生労働省も、労働環境の安全基準としてWBGTを活用するよう指導しています。


屋外作業現場でのWBGT計測方法

1. 携帯型WBGT計

  • 作業現場に持ち運びできるコンパクト機器。

  • 現場責任者や安全担当者が定期的に測定。

2. 据置型センサー

  • 常設してリアルタイムで計測し、表示板やアラームで警告。

  • 大規模建設現場や工場敷地内に設置されるケースが多い。

3. IoT連動型

  • 複数のセンサーをネットワークで管理し、スマホやPCに通知。

  • データを蓄積し、作業管理のエビデンスとして活用可能。


安全マニュアル活用のポイント

1. 休憩ルールの明確化

  • WBGT値に応じて「作業時間:休憩時間」の比率を定める。

    • 例:WBGT30℃ → 作業50分、休憩10分。

2. 水分補給ルール

  • 20分ごとに200mlを目安に補給。

  • 塩分を含む経口補水液を推奨。

3. 作業中止基準

  • WBGT31℃以上での重作業は禁止。

  • 作業継続が必要な場合は交代制を導入。

4. 体調チェック体制

  • 作業開始前に簡単な問診(めまい・睡眠不足の有無など)。

  • 異常を感じた作業員は即時離脱できる仕組みを整備。


実際の現場での運用事例

  • 建設現場A社
     WBGTセンサーを常設し、現場の掲示板に数値をリアルタイム表示。作業員の意識が高まり、熱中症発生率が前年比70%減少。

  • 物流拠点B社
     IoT型センサーを導入し、WBGTが一定値を超えると管理者と作業員にスマホでアラート送信。現場の休憩導入率が向上。

  • 道路工事チームC社
     WBGT値と連動したマニュアルを掲示。基準を超えると自動的に作業を中断する仕組みを導入し、重大事故を未然に防止。


補助金・助成制度の活用

  • 厚生労働省:職場環境改善助成金
     WBGT計や熱中症対策機器の購入が対象。

  • 自治体独自支援
     東京都・大阪府などでは、現場用暑さ対策機器の導入を補助。

  • 中小企業向け制度
     簡易型計測器やアラートシステムの導入費を助成。


まとめ

屋外作業現場での暑さ対策は「感覚」ではなく 科学的な指標(WBGT) に基づいて判断することが重要です。

  • WBGT計測で現場の暑さを数値化

  • 値に応じて休憩・水分補給・作業中止の基準を設定

  • 安全マニュアルを全員で共有し、徹底運用

  • 補助金や助成制度を活用して導入コストを軽減

これらを実践することで、熱中症ゼロを目指す安全な作業現場を実現できます。WBGTは単なる「数字」ではなく、作業員の命を守る 行動の指標 なのです。