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夏の屋外作業現場は、直射日光や地面からの照り返しによって体感温度が40℃を超えることもあり、熱中症リスクが極めて高い環境です。労働災害防止の観点からも、 客観的な指標をもとに安全管理を行うこと が必須となっています。その中心的な役割を果たすのが WBGT(湿球黒球温度)。単なる気温ではなく湿度・放射熱を加味した「暑さ指数」であり、労働安全衛生分野で標準的に活用されています。この記事では、WBGT計測の重要性と、実際に現場で活用する安全マニュアルについて詳しく解説します。
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)は、次の3つの要素を組み合わせて算出される暑さの総合指標です。
湿球温度(湿度を反映)
黒球温度(輻射熱=太陽光や地面からの熱を反映)
乾球温度(通常の気温)
これらを組み合わせることで、人が体感する「暑さ」を正確に表現できます。
25℃未満:ほぼ安全。通常作業可。
25〜28℃:警戒。水分補給と適度な休憩が必要。
28〜31℃:厳重警戒。激しい運動や作業は制限。
31℃以上:危険。原則として作業を中止。
厚生労働省も、労働環境の安全基準としてWBGTを活用するよう指導しています。
作業現場に持ち運びできるコンパクト機器。
現場責任者や安全担当者が定期的に測定。
常設してリアルタイムで計測し、表示板やアラームで警告。
大規模建設現場や工場敷地内に設置されるケースが多い。
複数のセンサーをネットワークで管理し、スマホやPCに通知。
データを蓄積し、作業管理のエビデンスとして活用可能。
WBGT値に応じて「作業時間:休憩時間」の比率を定める。
例:WBGT30℃ → 作業50分、休憩10分。
20分ごとに200mlを目安に補給。
塩分を含む経口補水液を推奨。
WBGT31℃以上での重作業は禁止。
作業継続が必要な場合は交代制を導入。
作業開始前に簡単な問診(めまい・睡眠不足の有無など)。
異常を感じた作業員は即時離脱できる仕組みを整備。
建設現場A社
WBGTセンサーを常設し、現場の掲示板に数値をリアルタイム表示。作業員の意識が高まり、熱中症発生率が前年比70%減少。
物流拠点B社
IoT型センサーを導入し、WBGTが一定値を超えると管理者と作業員にスマホでアラート送信。現場の休憩導入率が向上。
道路工事チームC社
WBGT値と連動したマニュアルを掲示。基準を超えると自動的に作業を中断する仕組みを導入し、重大事故を未然に防止。
厚生労働省:職場環境改善助成金
WBGT計や熱中症対策機器の購入が対象。
自治体独自支援
東京都・大阪府などでは、現場用暑さ対策機器の導入を補助。
中小企業向け制度
簡易型計測器やアラートシステムの導入費を助成。
屋外作業現場での暑さ対策は「感覚」ではなく 科学的な指標(WBGT) に基づいて判断することが重要です。
WBGT計測で現場の暑さを数値化
値に応じて休憩・水分補給・作業中止の基準を設定
安全マニュアルを全員で共有し、徹底運用
補助金や助成制度を活用して導入コストを軽減
これらを実践することで、熱中症ゼロを目指す安全な作業現場を実現できます。WBGTは単なる「数字」ではなく、作業員の命を守る 行動の指標 なのです。