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毎年のように記録的な猛暑が報じられる日本の夏。特に子どもたちが長時間を過ごす学校では、熱中症リスクをいかに減らすかが大きな課題となっています。空調設備があっても、直射日光や外気の熱が建物に侵入すれば、室温は上昇し、学習環境の質も下がります。そこで重要になるのが「入れない」暑さ対策、つまり 断熱 と 遮熱 の工夫です。本記事では、学校における効果的な「入れない」対策について詳しく解説します。
「入れない」とは、屋外からの熱の侵入を最小限にする取り組みのことです。学校では次の3つの観点が特に重要になります。
建物構造で熱を遮る(断熱)
壁や屋根、窓などを断熱材で補強し、外気温の影響を軽減します。
日射をカットする(遮熱)
太陽光を反射・遮蔽することで、室内に届く熱を減らします。
熱源を室内に入れない工夫
窓の開け方やカーテンの使い方など、日常的な運用で熱の侵入を抑えます。
学校の屋根は直射日光を受けやすく、夏場は表面温度が60℃以上になることも。屋根裏に断熱材を追加したり、天井材を高断熱仕様に替えることで、教室内の温度上昇を大幅に抑えられます。
窓からの熱の侵入は室内温度上昇の大きな要因です。近年は、透明で視界を妨げず、断熱効果の高いフィルムが多く登場しています。エアコン効率を高め、電気代削減にもつながるため、費用対効果が高い対策といえます。
厚手のカーテンや断熱スクリーンは、外気熱を遮断しつつ光をコントロールできます。教室の雰囲気を暗くしすぎないように、透光性を調整できる製品を選ぶことがポイントです。
屋根や外壁に遮熱塗料を塗ると、太陽光の赤外線を反射し、熱の吸収を抑えられます。白や淡色系の塗装は特に効果的で、室内温度を2〜3℃下げる事例もあります。
窓の外側にルーバー(日よけ板)やオーニング(可動式ひさし)を設置すれば、直射日光を効果的にカットできます。特に南側・西側の窓は熱が入りやすいため、重点的に導入すると効果的です。
ゴーヤやアサガオなどの植物を育てて窓際に設けるグリーンカーテンは、環境教育にもつながる人気の方法です。植物が育つことで日射を遮り、蒸散作用による涼しさも得られます。
風通しを考えて窓を開ける場合でも、日射が強い側はカーテンを引くなど工夫することで、熱の侵入を抑えられます。
午後に日射が強く差し込む西側教室を、夏季は避けて使用するなど、学校内の配置換えで暑さを分散する取り組みも可能です。
遮熱ネットの設置やグリーンカーテンの栽培などは、地域ボランティアと協力して行う学校も増えています。費用負担を軽減しつつ、地域全体で子どもを守る仕組みに発展できます。
「入れない」暑さ対策は、一見するとコストがかかるように思われがちですが、光熱費削減や空調効率向上により、中長期的にはコストメリットが期待できます。さらに国や自治体によっては、断熱改修や遮熱塗料の導入に補助金・助成金が活用できる場合もあるため、情報収集をしっかり行うことが重要です。
学校の暑さ対策は、単にエアコンを強くするのではなく、「熱を建物に入れない」工夫が欠かせません。
断熱:屋根・窓・カーテンで外気の影響を減らす
遮熱:塗料・日よけ・植物で日射をカットする
運用:窓の開閉ルールや教室配置で効果を高める
こうした総合的な取り組みが、子どもたちの健康を守り、安心して学べる環境をつくります。これからの学校づくりにおいて、断熱・遮熱の「入れない」対策はますます重要になっていくでしょう。